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「ジェシカが駆け抜けた七年間について」

今年2月に出た本。「葉桜…」よりは薄いのですぐに読める。マラソンの女子選手がホテルで自殺する。その選手、アユミ・ハラダは監督のツトム・カナザワの子供を妊娠したが、中絶させられ、マラソン選手として走れない体になっていた。自分を捨てた監督への恨みを抱えたままの自殺だった。アユミと同じクラブに所属していたエチオピア人のジェシカ・エドルは監督に強い復讐心を抱く。

というのがプロットだが、やはり仕掛けのある話で、この紹介の仕方にもミスリーディングがある。「葉桜…」のような大仕掛けではないので、見劣りはするが、よくまとまった話と思う。マラソン競技への取材も行き届いており、読んで損のないミステリ。

「葉桜の季節に君を想うということ」

「このミス」1位。ようやく読む。「陽気なギャングが地球を回す」とは違って、これは絶対に映画化できないタイプの作品。アイラ・レヴィンとか小泉喜美子を思い出す。と書くと、ミステリファンにはトリックの種類が分かってしまうが、終盤の驚天動地の真相でそれまで読んでいたものが別の様相を見せるというタイプの○○トリックを用いた作品だ。
もうすっかり騙された。こんなにきれいに騙されたのは何年ぶりだろう。そして感心した。本格ミステリの醍醐味がありますね。