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「ヒトは脳から太る」

「ヒトは脳から太る」

「ヒトは脳から太る」

早食いはなぜ肥満につながるのか。僕は早く食べることによって血糖値が上がる前に量を食べすぎるためと思っていた。人は血糖値が上がることによって満腹感を感じる仕組みになっているからだ。たいていのダイエット本にもそう書いてある。この考え方なら、一定量を食べる限り、早く食べても遅く食べても太り方は同じはずだ。

ところが、本書には「摂食量を同じにしても早食いの方が肥満傾向にある」と書いてある。なぜか。「早食いのときは、脳内にドーパミンやオレキシンが活発に分泌されて、体は貪欲にカロリーを取り込み、ため込むモードになって」いるからだそうだ。

これを裏付けるものとして、成人男子に糖尿病検査で使われる糖負荷テスト用の糖質液を飲んでもらう実験を紹介している。1回目は速やかに血糖値が上昇したが、2回目の上昇は1回目の半分、3回目には上昇しなかったという。被験者はこのブドウ糖液を飲むのが嫌になったのだそうだ。

糖の吸収はおいしいとか飲みたいといった前向きの気持ちがあるかないかで大きな影響を受けるということです。まずいな、いやだなと思いながら食事をするとカロリー吸収は抑えられるが、おいしそう、食べたいな、という前向きの気持ちで食べると、体はそれに反応して、積極的に吸収しようとするのです。

もう一つ、太らないためにはものを良く噛んで食べることが推奨される。これも血糖値の上昇速度と絡めて説明されることが多いが、この本はラットでの実験から「唾液や水分でドロドロになったものは、固形物のまざったつぶつぶのものよりも、飲み込んだあとは血糖値の上昇が小さい」としている。消化管は固形状のものが入ってくると、頑張って消化吸収しようとするのだという。

同じ量、カロリーのものを食べてもドロドロの状態の方が吸収は少ないという意外な結論だ。普通、よく噛むのは消化吸収を助けるためと言われるが、それとはまったく逆の結論なのである。だからカロリーを吸収しにくくするためには良く噛んでドロドロの状態にしてから飲み込んだ方がいいというわけ。

この2つの指摘が僕には面白かった。本書のサブタイトルは「人間だけに仕組まれた“第2の食欲”とは」。お腹いっぱいなのにデザートを食べてしまう別腹の説明など前半は脳と食欲の関係が中心、後半はダイエットに必要な知識と食全般について書いてある。具体的なダイエット法はないが、朝バナナダイエットのようにこうすれば痩せると決めつけるようなダイエット法がいかに間違っているかがよく分かる本である。ダイエットに関心のある人は読んでおいて損はない。

著者の山本隆は畿央大学大学院健康科学研究科教授。

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「からだが変わる体幹ウォーキング」

「からだが変わる体幹ウォーキング」

「からだが変わる体幹ウォーキング」

体幹とは体の胴体部分のこと。体幹にある胸や背中や腹の筋肉は大きいので、ここを正しく使えば、運動効果が大きくなり、同じ距離を歩いてもウォーキングが効率的にできる。運動効果を大きくするために手を大きく振って歩くのが良いと言われるし、そうやって歩いている人も多いが、腕の筋肉だけを使っても効果は少ない。同じような指摘は他のウォーキング本でも読んだことがある。

体幹ウォーキングのためには正しい立ち方が必要で、猫背やバランスを崩した姿勢で歩いていると、一部の筋肉に負担がかかり、痛めることになる、という著者の主張はもっともだと思う。では、どう立てば良いかというのがなかなか難しい。チェック項目が多いのだ。

  1. 顔=あごを引いて、まっすぐ前を向いているか
  2. 肩=余分な力が入って怒り肩になっていないか
  3. 背中=そっくり返らずに背筋がまっすぐ伸びているか
  4. 胸=少し開き気味か(少しだけ肩甲骨を引き寄せて)
  5. お腹=突き出さずに、腹筋に軽く力が入っているか

など、9項目ある。正しく立つだけでも大変だ。どんな物事でも基本は大事なので、ここはしっかりチェックしておいた方が良いのだろう。

本書はこれからウォーキングを始める人よりも、既にウォーキングをしていてさらに効率的な歩き方をしたい人、歩き方を是正したい人に向いている。さらっと読める本である。「歩く時間帯はダイエットのためなら、血糖値が低く、脂肪が燃えやすい朝」が良いそうだ。これは実践したいところ。

著者は生活のなかでウオーキングを習慣化しようとする時、大敵となるのは雨や二日酔いや疲れなどの言い訳の数々、としている。いったんウォーキングにはまってしまうと、こうしたことは少しも障害ではなくなる。僕は雨の日は傘を差して歩いていたし、二日酔いの時に歩くと、酒が早く抜けると感じたものだ。ウォーキング依存症になると、歩かない日は落ち着かなくなる、というのは既に依存症の方には言うまでもない。

著者の金哲彦は箱根駅伝を4年連続で走り、リクルートランニングクラブ監督を経て現在はNPO法人ニッポンランナーズ代表。「オリンピック選手から市民ランナーまで幅広い信望を得るカリスマコーチ」だそうだ。

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「医者がすすめる背伸びダイエット」

「医者がすすめる背伸びダイエット」

「医者がすすめる背伸びダイエット」

一昨年から昨年にかけてダイエット本はかなり読んだ。食事改善とウオーキング、スロートレーニングの併用によって体重は落とせたので今はダイエットに関しては一段落しているが、書店で面白そうなダイエット関連の本を見つけると、つい買ってしまう。著者の佐藤万成(かずなり)は新潟市内の開業医で、ダイエット外来を開いている。世の中には怪しげなダイエット法がたくさんあるが、医師の本なら信用できるだろう。

手軽な方法でダイエットを考えている人にこの本は最適だ。朝昼晩1分間の背伸びをすることで体脂肪を落とせるという内容。1回10分週3回のスロートレーニングより手軽だし、背伸びは気持ちが良い。ダイエットに失敗し続けている人でもこれなら続くのではないか。

なぜ背伸びがダイエットにつながるのか。本書のオビにはこう要約してある。

背伸びをすると…
腹筋が引き締まる
骨盤のゆがみが取れる
血流がよくなる
便秘が解消される
腰痛が改善される

基礎代謝量が上がって体脂肪が減っていきます。

背伸びするだけで本当にこんな効果があるのかと思ってしまうが、書いてあることは真っ当だ。著者は「ダイエットの基本中の基本は基礎代謝量を上げること」と書く。基礎代謝量を上げるのならスロートレーニングによって筋肉量を増やすという考え方が一般的だと思う。この本も基本的にはそれと同じことを言っている。

背伸びをすると特に脊柱起立筋を中心に全身の遅筋が鍛えられ、基礎代謝量アップによる脂肪燃焼作用が起きます。それからスロートレーニング効果による成長ホルモンの分泌とそれに伴う脂肪燃焼効果とアンチエイジング効果が生じます。このメカニズムが、背伸びに隠されたダイエット効果の秘密だったのです。

これに加えて背伸びをしながらの呼吸法と食事の改善についても書いてある。こうしたことを実行することで、血流が良くなり、ダイエットの大敵である冷え(基礎代謝量を落とす)が解消される。肩こりも緩和されるなどの効果があるという。背伸びはストレッチにもつながるから、こうした効果があるのも納得だ。

ただし、紹介されているダイエット外来を訪れた人の実例はいずれもかなりの肥満の人たちのもの。体重110キロが100キロに減ったとか、そういうレベルの例ばかりである。だから本書はダイエットの第一歩として読むのが良いだろう。背伸びして少しでも体脂肪減少につながるなら、やってみて損はない。背伸びには金も時間もかからない。

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「仕事ができる人はなぜ筋トレをするのか」

昨年11月ごろからスロートレーニングを始めて3カ月ほど続けた。体重が目標値まで落ちたので、その後はあまり熱心にやらなくなった。この本を読んで、またちょっと熱心にやろうかという気になった。著者はトレーナーとしてプロのアスリートや外資系エグゼクティブ、経営者などを指導した経歴を持つ。その体験から仕事のできる人は自分の体の管理もできていることを知ったという。

「アメリカのエグゼクティブの間では、肥満は問題外、たんに痩せているだけでなく、トレーニングによって体を鍛えるのがもはや常識になっている」のだそうだ。

体を鍛えるためには徐々に筋肉への負荷を強めていく必要がある。この当たり前のことを僕は実践してなくて、腕立て伏せやレッグレイズの回数を増やしていなかった。骨格筋率がなかなか上がらなかったのは負荷を強めなかったためだろう。体重は8キロ余り落ちて体は軽くなっているのだから、同じ回数やっていては始めた頃よりも負荷は弱まっていることになる。これでは筋肉が付くわけがない。

タイトルが魅力的なためもあって、この本、売れているらしい。ただし、タイトルとは裏腹に筋トレをする人が必ずしも仕事ができるとはかぎらないのが悩ましいところではある。それにこの本を読んでもトレーニングの仕方は分からない。体を鍛えなくては、という動機付けにはなるだろう。

筋トレの実践的な方法は石井直方さんの本(「体脂肪が落ちるトレーニング」とか)を読んだ方がいい。石井さんの本はトレーニングの実践法だけでなく、理論的にも優れていて、これまた大いに筋トレのモチベーションを高めてくれる。

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