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「凡人として生きるということ」

2009 年 4 月 7 日 火曜日
「凡人として生きるということ」

「凡人として生きるということ」

週刊金曜日で紹介されていた「貧困肥満 下流ほど太る新階級社会」を買いに書店に行ったが、なかった。新書コーナーで代わりに見つけたのがこの本。押井守監督が昨年7月、「スカイ・クロラ The Sky Crawlers」公開前に出した本で、180ページ足らずなので、すぐに読み終わる。

これも「スカイ・クロラ」同様に若者へのメッセージだ。「若さに価値などない」「すべて巧妙につくられたデマ」という主張から始まって、「金や名声よりも必要なのは美学と情熱」「勝負は諦めた時に負けが決まる」「社会に出ることは必要」「友だちなんかいらない」など著者の主張が体験を交えて語られていく。押井守は高校時代に引きこもりに近い生活を送っていたそうだ。それは他人と話すよりも1人で過ごすことの方が好きだったからだという。

押井守のアニメには友情や正義を真正面から取り上げたものはないし、そうした真正直なキャラクターもいない。それはこうした考え方が根底にあるためなのだろう。宮崎駿のネガのような在り方と言えようか。それでも僕は両者のアニメのどちらも好きだ。昨年公開の映画で言えば、「崖の上のポニョ」よりも「スカイ・クロラ」を高く評価する。だが、次のような一節を読むと、両者の考え方は近いのではないかと思う。

天才の身でない我々は、情熱を持ち続けることしか、この世を渡っていく術がないのだ。情熱さえあれば、貧乏も苦難も乗り越えられるだろう。『名もなく貧しく美しく』の話を先に書いたが、金や名声を追っていけば、それが失われたときには人は堕落する。だが、自分の美学と情熱があれば、富と名声に煩わされることなく生きていける。

この後の章で押井守は「いい加減に生きよう」と主張しているけれど、いい加減な生き方では美学と情熱を持ち続けることも難しいのではないか。ここで言ういい加減とは世間的ないい加減であって、自分に対しては誠実に生きることが必要なのだろう。

すべての人に必読の本ではないけれど、押井守ファンは読んでおいて損はないと思う。