「告白」

「告白」

「告白」

「告白」は週刊文春ミステリーベストテン1位、「このミス」では4位だった。6章から成っていて、1章あたり50ページ足らず。これなら体力なくても読みやすい。第1章の「聖職者」は小説推理新人賞受賞作。ある中学校の女性教師が終業式の日、1年生のクラスの生徒の前で教師を辞めると語り始める。その理由は彼女の4歳の娘が学校のプールで水死体で発見されたことだった。娘はプールのそばにある家の犬にえさをやろうとして、プールに落ちたらしい。警察は事故死と断定する。しかし、女性教師は「娘は殺された。犯人は2人。このクラスの中にいる」と指摘する。

この1章だけ取り上げれば、女性の心理とか執着、恨みとかが凝縮されて、いかにも女性作家らしい作品だなと思う。よくまとまっていて、新人賞としておかしくない。嫌な気分にさせるミステリを嫌ミスと言うそうだが、そこまではないかもしれない。決着に疑問はあるけれども、これはこれで良いと思う。

第2章の「殉教者」、個人的にはこれが一番面白かった。クラスは2年に進級し、大学を出たばかりの脳天気な男性教師が担任になる。犯人2人のうち、1人は不登校になったが、もう1人の主犯格の少年は以前と変わらず登校してくる。クラスの生徒は彼を無視し、やがて堰を切ったようにいじめが始まる。男性教師は不登校の生徒を登校させようと、委員長を伴って家に行くようになるが、それが悲劇を引き起こす。この章は委員長の女子生徒の視点で語られる。いじめに加われず、少年をかばった委員長もまたいじめの対象になる。やがて委員長は少年の意外な素顔を見て好意を持ち始める。ここは重松清「きみの友だち」を彷彿させるが、あの小説のいじめよりもっと陰湿だ。

3、4、5章はそれぞれ事件の関係者の別の視点で語られていく。そして6章で再び女性教師が登場し、残酷な結末を迎えることになる。一気に読める小説だが、僕は所々に歪さを感じた。第1章の「聖職者」を書いた時点でこういう連作にする意図があったかどうかは分からないが、必ずしも成功していないように思う。木に竹を接いだ感じを受けるのだ。ミステリ風味も3章以降は薄い。個人的に嫌ミスもあまり好きではない。

3章までは小説推理に掲載され、あとの3章は書き下ろし。全編書き下ろしならまた違った感じになったかもしれない。それにしても新人とは思えない作品なので、2作目以降には期待できるのではないか。ちなみに本の帯にある読者の感想は当たり前だけれども、いずれも褒めすぎ。ミステリをあまり読んでいない人たちが書いたとしか思えない。