ボクサーのパオロ・ロベルトが金髪の巨人と戦う第25章から止まらない。怒濤の展開で読むのをやめることは不可能だ。
パオロはわけがわからず立ちつくした。たったいま、パンチが四発入った。ふつうの相手ならとっくにダウンしている。自分はコーナーに下がり、レフェリーがカウントを取り始めるところだ。それなのに、この男には一発も効いていないらしい。
”なんてこった。この野郎、ふつうじゃねえ”
全身を筋肉で覆われたこの金髪の巨人になぜパンチが効かないのかは合理的に説明される。作者のスティーグ・ラーソンがスウェーデンの実在のボクサーであるパオロ・ロベルトをこの小説に登場させたのはこの場面を描くのに都合が良かったからだろう。実在のボクサーなら余計な説明は要らない。
第4部のタイトル「ターミネーター・モード」はこの不死身の金髪の巨人を指すと同時に主人公リスベット・サランデルも指している。前作「ミレニアム1 ドラゴン・タトゥーの女」の感想に「リスベットのキャラクターを創造したことで、この小説の成功は決まったようなものだっただろう」と書いたが、今回はそのリスベットが主人公なのだから、面白くないはずがない。
今回は人身売買・強制売春とリスベットの過去が主眼である。リスベットはなぜ社会不適格者の烙印を押され、後見人が付いているのか。それが明らかになる。天才的なハッカーであるリスベットは前作の最後で悪徳企業から30億クローネの預金を奪取した。序盤に描かれるのはそのリスベットがグラナダで優雅に暮らす姿。しかし、リスベットの卑劣な後見人でリスベットに手痛い仕打ちを受けた弁護士のビュルマンは密かにリスベットへの復讐を画策していた。一方、月刊誌「ミレニアム」の編集部はフリージャーナリストのダグとその妻ミアが持ち込んだ人身売買と強制売春の特集と本を発行する準備をしていた。そのダグとミア、ビュルマンが殺害される。現場に落ちていた拳銃にリスベットの指紋があったことから、リスベットは警察から追われることになる。「ミレニアム」発行責任者のミカエル・ブルムクヴィストはリスベットの無実を信じて事件の調査を始める。
事件はリスベットの過去と深い関係がある。これはリスベットの少女時代に起きた“最悪の出来事”に対する決着、リベンジの話でもある。
終盤、リスベットに待ち受けるショッキングな運命は映画に前例がある。これは現実的にはほぼ不可能な展開であり、映画だから許されることだと映画を見たときに思った。スティーグ・ラーソン、この映画を見ているのではないか。現実的には不可能であっても、読者はそれを望んでいる。それをラーソンは理解していた。エンタテインメント小説にもそんなあり得ない展開が許されるのだ。
反極右・反人種差別を掲げるジャーナリストだったという作者の硬派な考え方は小説の基調となっており、それをエンタテインメントでくるんだ作品に仕上げている。第1作だけでも十分な資格があったが、年末のベストテン入りはこの作品でさらに決定的になったと思う。急逝した作者の最後の作品となる第3作の刊行が待ち遠しい。
【amazon】ミレニアム2 上 火と戯れる女
また・・・、すごく面白そう・・困る、ついていけない。
今すぐ読みたい、くぅ。(+_+;
面白いですよ。
読んでみてくださいませ(^^ゞ