広瀬隆の本を読むのは「眠れない話」以来か。その前に「ジョン・ウェインはなぜ死んだか」「クラウゼヴィッツの暗号文」「億万長者はハリウッドを殺す」を読んでいるが、いずれにしても20年ぶりぐらいになる。かつては原発の危険性と言えば、広瀬隆が思い浮かんだ。最近は経済問題を中心に書いているらしい。Wikipediaによれば、2001年以降、原発関係の著作はないそうだ。
本書はアメリカのサブプライム・ローン問題に端を発する金融危機を「金融腐敗」と定義するところから始まる。ウォール街を牛耳る国際金融マフィアによって原油や穀物相場が左右される現状と、一部の富裕層が投機に興じて富を独占し、銀行と証券の兼業を許可するという愚かな政策を打ち出し、バブルが弾けて世界経済が崩壊した過程を解説している。
投機による虚業が蔓延したおかげでアメリカのAIGやGMやシティグループやゴールドマン・サックスが政府の監督下に入り、巨額の公的資金を投入された。著者はこの状況を見て、「どこから見ても、これは、資本主義のルールではありません。これら一連の『救済策』なるものは、まぎれもなく社会主義国家や共産主義国家のルールです」と書く。こうした事態を招いた戦犯は先物取引を盛んにさせ、投機屋の後ろ盾となったロバート・ルービンやローレンス・サマーズ、FRB議長を務めたアラン・グリーンスパンなどなど。彼らの施策が現在の世界的な恐慌を生む要因となったのだそうだ。
日本の資金は金利の高いアメリカの市場にどんどん流れていく。この流れを作ったのは日銀のゼロ金利政策にほかならない、という指摘には納得できる。アメリカの投資筋が狙っているものの一つに日本の郵便貯金があるそうで、かつての首相が嬉々として郵政民営化を構造改革などという名目で推し進めたのはアメリカの意思があったからにほかならない。この首相を「アメリカのポチ」と言ったのは小林信彦だったか。株が一瞬にして紙くずになるのと同様に、預金価値が政策によって一挙に下がってもおかしくない。金融機関に預けたお金など何の保障もなくなる恐れがある。預金したお金は金に換えておいた方が安全かもしれないなという思いを強くする。だいたい金融機関に預けていたって、金利などなきに等しいし、いつ銀行が倒産しても不思議ではないのだ。
真っ先に切り捨てられるタイタニックの三等船客にすぎない一般庶民はいったいどうすればいいのか。本書は金を狙ったハゲタカが跋扈するアメリカの金融業界の構造を解き明かし、ドル暴落に備えて日本のアメリカ中心主義からの方向転換を提言する。多数引用されているニューヨークタイムズの風刺漫画を評価しすぎている感じがないでもないが、読後、無力感に襲われる本である。
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ちょっぴり金融アナリストぽい知り合いができまして、彼女とさっきまで、過大評価されている小泉について話してたとこです。
東にもいえますが、なんで大多数の日本人ってマスコミにホイホイ乗るんでしょうね。
広瀬隆も本書の中で指摘していますが、今のマスコミの問題は目の前で起こっていることは報道できても、長期的な視野に立った分析ができないことでしょうね。
だからマスコミを利用しようと思う人物の思うとおりに利用されてしまい、国民の大多数もそれに乗ってしまうのでしょう。
「広瀬隆」・・懐かしい名前です。
「ジョン・ウェインはなぜ死んだか」「クラウゼヴィッツの暗号文」「億万長者はハリウッドを殺す」、この3冊しっかり読みました。
ただ3冊も読めば、「これでいいかな」と思ってしまいました。
「ドンキホーテ」というイメージもありますが、もっとドロドロしたものがあるのかもしれませんが・・
「ジョン・ウェインはなぜ死んだか」は、お薦めの本です。一読の価値はあります(ないかも?)
「ジョン・ウェインはなぜ死んだか」は面白かったですね。ハリウッドのスターがなぜガンでばたばた死んでいるのかを原爆実験と関連づけたのが秀逸でした。スティーブ・マックイーンやロナルド・レーガンなどの西部劇スターの悲劇ですね。