「兄 かぞくのくに」

映画「かぞくのくに」の基になったヤン・ヨンヒ監督のノンフィクション「兄 かぞくのくに」を読んだ。帰国事業で北朝鮮に行った3人に兄について書き、激しく胸を揺さぶられる。ほとんどの国民は信じていない幻想の上に成り立ち、人を幸せにしない北朝鮮への批判も強いが、それ以上にこれは家族の物語だ。

「この本の唯一の欠点は外で読めないこと。泣いてしまうから」とライブトークの中で映画のプロデューサーが言っている。ホントにその通り。思わず嗚咽を漏らしてしまう場面がたくさんある。しかし、その一方で家族の温かさとそこから生まれるユーモアがある。泣き笑いというと通俗的に聞こえるが、痛切な悲しみの合間に日常のほのかなユーモアがあるのだ。

映画が描いたのは3人の兄のうちの1人。この部分よりも二番目の兄コナの家族を描いた第2部がとても良かった。コナ兄は美人のMさんと結婚し、2人の子供をもうけるが、Mさんは出て行ってしまう。兄の息子である10歳のチソンが、電話をかけてきた母親に「幸せの邪魔をするな!」「二度と、お母さんと名乗るな!」と拒絶する場面には胸を打たれた。

ヤン・ヨンヒはライブトークを見ると、かなり饒舌な人だ。40分のライブトークのうち、30分以上は1人で話してる。たくましいオモニの血を受け継いでいるのだろう。「理想の国の象徴である平壌に障害者は住むことを許されない」という発言は驚きだ。障害を持つ人は地方に追いやられるのだそうだ。

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