ディーヴァーの小説は「ボーン・コレクター」は持っているが、読んでいない(デンゼル・ワシントン、アンジェリーナ・ジョリー主演で映画化されたが、これまたテレビでちらりと見ただけ)。2005年に出た短編集「クリスマス・ストーリー」は途中まで読んだ。短編で感じたのはそのどんでん返しの鮮やかさ。ナイフの切れ味のような鮮やかさだなと思った。といっても、これも11編読んで中断している。あと5編残っているので、これから読もう。
で、「ウォッチメイカー」。もうこれは終盤の展開に唖然とする。どんでん返しは1回だけだからどんでん返しなのだが、ストーリーがこれほど3回も4回もひっくり返る話も珍しい。ディーヴァーは「これぐらいツイストしなきゃミステリじゃない」と思っているのだろう。
時計に執着を持つウォッチメイカーと名乗る殺人鬼を四肢麻痺のリンカーン・ライムが追い詰める。という風に序盤は始まる。サイコな話かと思ってしまうが、そんな単純な話ではない。ライムの相棒であるアメリア・サックスは単独でニューヨーク市警の腐敗を捜査する。別々の事件に見えて、これが絡んでくるのは想像つくのだが、そこから先は感心するほかない。サービス精神の旺盛な作家なのだ。ここまでひねるのは。
だが、読み終えて何が残るかというと、ああ面白かったという感想しか残らない。エンタテインメントはそれで良いのだが、なんというか、野暮を承知で言えば、人間のドラマをもう少し描いてほしいと思えてくるのだ。キャラクターが立っているというのとは別に人間のドラマの深みが欲しくなる。そういうのは別の小説を読めば済むことなんだけど。ミステリの中にもそういう小説はある。
といっても十分面白かったので、家にある「ボーン・コレクター」も読んでみようと思う。