「A」「A2」の監督森達也が書いたノンフィクション。スプーン曲げの清田益章、宇宙人に400回会ったという秋山真人、ダウジングの堤裕司の3人を取り上げている。フジテレビで同名のドキュメンタリー(1998年)が放映されたらしいが、僕は未見。このノンフィクションはその番組を作る過程とその後を描く。森監督は超能力について肯定も否定もしない(できない)というスタンス。ただ、3人と日常的に交流しているのでその人間性へのシンパシーはある。清田益章の両親(寿司屋をやっている)が登場する場面などは宮部みゆきの小説のような雰囲気である。
このノンフィクションの中でも語られる清田益章の超能力がトリックだということを暴いた16年前の番組は僕も見ている(トリックを使ったのは番組のスタッフに追い詰められたからだという)。あれで清田は終わったと思っている人が多いのではないか。しかし、その後も清田はスプーンを曲げ続けているのだった。
常人にはああいうスプーンの曲げ方や折り方はできない、という理由から、このノンフィクションに登場する人たち(石田純一や前田日明も出てくる)は清田を信じているようだが、清田益章はフツーの人ではなく、何十年もスプーン曲げをやっているベテランなわけですからね。仮に超能力でスプーンを曲げているのだとしても、この能力は(これ以上、上には行かない)水平線上の超能力とでも言うしかない。スプーン曲げという何の役にも立たない超能力というのは悲しいものがある。
それにしても否定派の最右翼である大槻義彦が取材にも応じないのには驚く(他人のネタにはされたくないそうだ)。きっと単なるタレントなのだろう。超能力を偽物と言いながら、自分も偽物なのだった。