風邪で昨日からダウンしているので、先日買った映画「ミリオンダラー・ベイビー」の原作を読む。F・X・トゥール「テン・カウント」に収録されている。60ページ足らずの短編。
32歳の女性ボクサー、マギーが老トレーナーのフランクに指導を頼む。女が殴られるのを見るのが嫌いなフランクは最初は断っていたが、熱心に練習するマギーに資質があると見て、指導するようになる。マギーは日を追うごとに上達し、試合でも連戦連勝。多額のファイトマネーを稼ぐようになり、「世界初のミリオン・ダラー・ベイビィ(100万ドル稼ぐ女性ボクサー)になるか」とマスコミの注目も集めるようになる。しかし、ロシアの女性ボクサーとの試合が2人の運命を変える。
貧しい境遇にある女性ボクサーが順調に勝ち上がっていく話と見当をつけていたので、後半の展開は思いもよらないものだった。大変厳しいラストで、このままでは映画になりにくいのではないかと思う。アカデミー助演男優賞を受賞したモーガン・フリーマンのキャラクターは小説には出てこない。かなり脚色が加えてあるのだろう。
著者のトゥールはボクシングのカットマンで、この1冊を残しただけで世を去った。敗者に向ける視線が切実さと厳しさを併せ持っているのは自身も苦労人だからだと思う。