「MW」(ムウ)

「MW」

「MW」

玉木宏、山田孝之主演で映画化された。予告編が面白そうだったので、手塚治虫の原作を読む。ヒューマニズムを基調にした作品が多い手塚治虫としては異色の内容で、悪事の限りを尽くす男が主人公。問題作と言われるのも納得だが、犯罪を続ける主人公の動機と設定、その発展のさせ方の説得力がやや弱いと思う。復讐のためという動機なら分かりやすいが、これに毒ガスの影響による狂気という要因が加わる。終盤に至って主人公の動機はあきれるほど自分勝手かつ幼稚なものに変わってしまう。ここが説得力に欠けるのだ。1976年から78年にかけての雑誌連載なので、物語の設定にはベトナム戦争の影響があるが、戦争批判にはなり得ていない。女装しても違和感がない美しい主人公の造型は魅力的で、作品を読ませる力があるのだけれど、すっきりしない部分が残った。

南西諸島の沖ノ真船島(おきのまふねじま)で某国の毒ガスMWが漏れ、島民全員が死ぬ。本土から来ていた結城美知夫と賀来巌は洞窟にいて辛くも難を逃れた。事件は日本政府と某国によって完全に隠蔽された。15年後、結城はエリート銀行員となっているが、その裏で誘拐や殺人の犯罪を重ねる。毒ガス事件の関係者への復讐が目的だった。神父となった賀来は結城の犯罪をやめさせようとするが、同時に結城とホモセクシュアルな関係にもある。悪の道をためらいなく突っ走る結城と、結城の行為を否定しながら結城に惹かれる賀来。やがて結城の目的が世界に惨禍をもたらすことであることが分かってくる。

事件の隠蔽にかかわった大物政治家の名前が中田英覚である点など時代を感じさせる(ロッキード事件で田中角栄が逮捕されたのは1976年だった)。ストレートに世相を反映させると、物語は古びるのも早いが、当時のことを知らない若い世代には関係ないかもしれない。

結城はバイセクシュアルだが、寝た女をためらいなく殺すところなどを見ると、ホモセクシュアルの傾向の方が強いのだろう。結城の美しさと、結城との関係は間違いと悩む賀来の在り方を見て、山岸涼子「日出処の天子」の影響があるのではないかと思ったが、発表はこちらの方が早かった。ということは山岸涼子が影響を受けたのか。手塚治虫はやはり偉大な先駆者であり、その影響力は大きかったのだと思う。

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3 thoughts on “「MW」(ムウ)

  1. 45

    「日出処の天子」は大好きなのですが、山岸先生って手塚治虫に影響されてたんですか?
    「MW」とリンクしたことなかったわー。
    びっくりした。

  2. hiro 投稿作成者

    あ、単に同性愛に絡む主人公2人の関係からの連想ですので(^^ゞ
    でも調べたら作品の発表時期が近かったので、あり得ないことではないと思いますよ。

    今の若い世代の漫画家は違うでしょうが、一定の年代以上で手塚治虫に影響された漫画家は多いと思います。

  3. 45

    単に~、あははー(^O^)
    そうかー!そういう発想もなかったよー私。
    またびっくりした(^^ゞ はははー

    竹宮恵子の「風と木の詩」には大きくなって読むとウンザリしましたが、
    山岸先生の厩戸皇子さまは私のアイドルです♪
    毛人め!皇子を振るから入鹿は殺されたんだー!なんて思いました(/_;)

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