徳大寺有恒の「間違いだらけのクルマ選び」シリーズは毎年買っていた。年2冊刊行になってからも毎回買い、その影響で自動車雑誌のNAVIも購読するようになった(NAVIが4月号で休刊になるのはとても残念だ)。今回の出版社は以前の草思社ではなく、海竜社。草思社が昨年、民事再生法の適用を申請したことも影響しているのだろう。
エコカーと言えば、プリウスやインサイトなどのハイブリッドカーが思い浮かぶが、著者の主張はハイブリッドだけがエコカーではないということ。フォルクスワーゲンなどヨーロッパの自動車会社がディーゼルを含めた内燃機関のクルマの燃費を向上させているのに比べて日本のメーカーが内燃機関をないがしろにしている現状を批判している。ガソリンの高騰で一気にハイブリッドへの注目が集まったけれど、内燃機関のクルマが姿を消すのはまだ10年以上先であるとの見方がその根底にある。
著者はハイブリッドカーの弱点としてコストと重量を挙げる。限界は「従来のガソリンエンジン車の効率の悪い領域を、あくまでカバーしているに過ぎない」こと。すべての車種にハイブリッドを適用するのは難しいし、ガソリンがなくては走らないハイブリッドはガソリンエンジン車に完全に置き換わるものでもないのだ。あくまでつなぎであり、エコカーの一つにすぎない。
本書の前半はそうした著者の主張で、後半は「厳選エコカー30台徹底批評」。以前の本と同じような構成である。興味を持ったのは最後の批評に出てくるテスラ・モデルS。これはカリフォルニアに本拠を置くベンチャー企業のテスラ社が発売を予定している電気自動車。航続距離が短いのが電気自動車の欠点だが、このモデルSは最高480キロ走れるという。これは三菱i-MiEVの3倍だ。
同じテスラ社のロードスターはは501キロの世界記録を持っているという。0-100キロ加速は4秒前後でスポーツカーとしても優れた能力を持つ。従来の電気自動車の弱点を克服したクルマらしい。なぜ、そんなことが可能なのかという点は本書には書かれていないが、そうした次世代のクルマが出て来たことは喜ぶべきなのだろう。
本書はあくまで総論的な書き方で、ちょっと詳しさが足りず、物足りない思いも残る。普段、自動車雑誌を読んでいる人には目新しい部分は少ないかも知れない。しかし、エコカーの現在をよく知るには格好のテキストだと思う。
【amazon】間違いだらけのエコカー選び