「ローズマリーの息子」

ハヤカワ文庫に入ったので読んでみた。「ローズマリーの赤ちゃん」の30年ぶりの続編。2年前に単行本が出た際、かなりの悪評を読んでいたので、予想よりは面白かった。問題はラストの処理でしょう。ここで賛否両論あるのは分かる。気に入らないのならその直前までの話と思えばいい。ま、それ以前に小説としての膨らみが足りないのが決定的で、アイラ・レヴィンはもともと長大な小説を書く人ではないが、このプロットだけのような作りでは物足りない。

話はローズマリーが27年ぶりに昏睡から覚める場面で始まる。息子アンディは世界的な指導者になっており、1999年12月31日に世界中の人々が一斉にロウソクに灯をともし、ミレニアムを迎えようというプロジェクトを進めている。もちろん、悪魔とローズマリーとの間に出来た子どもであるから、何か裏にあるのは読者には承知のことで、それがどう描かれるかが焦点となる。

アイラ・レヴィンは24歳で「死の接吻」でデビューし、2作目として14年後に「ローズマリーの赤ちゃん」を書いた。その天才作家としてのキャリアはここでほぼ終わった。後に続く作品は才能の出涸らしみたいなものである。ただしこの2作(特に後者)が永遠に残る傑作であることは疑問の余地がない。

「ローズマリーの赤ちゃん」を読んだのは高校生のころだが、後半の展開に読んでいて息苦しくなったのを覚えている。ロマン・ポランスキー監督で映画化もされたが、映画自体は良くできていても、とてもこの傑作に及ぶものではなかった。続編は映画プロデューサーの要請で書かれたものらしい。天才も年を取れば、ただの人になるという見本のような出来には違いないし、時代設定からして、もはや映画化も無理のような気がする。昨年たくさん出たミレニアムもの(Y2Kとか)の1作ということになるだろう。ラストに目をつぶれば、暇つぶしにはなると思う。