「10人兄弟貧乏アイドル☆ 私、イケナイ少女だったんでしょうか?」

「10人兄弟貧乏アイドル」

「10人兄弟貧乏アイドル」

タレント上原美優の告白本。おやつに草を食べていたとか、7枚しかないパンツを兄弟で取り合い、ノーパンで学校に行っていたとか、壮絶な貧乏の話が面白そうだったので買った。読み始めてすぐに買ったのを後悔した。スカスカの行間、作文としか思えない文章。「アルジャーノンに花束を」のチャーリー・ゴードンをふと思い浮かべた。普通の本好きなら数ページで投げ出してもおかしくない本である。しかし、読み進むにつれて面白くなり、一気に読み終わった。これは本人が書いているのか、ゴーストライターがいたのか知らないが、よくまとまっている。編集者が良かったのだろう。

上原美優については一切知らなかった。本名藤崎睦美。種子島出身で、バラエティ番組で貧乏を売りにした活動をしているらしい。本書によると、家は雨が降ると傘を差さなくてはならないほど雨漏りがひどかった。幼稚園に行けず、昼間は家で一人ぼっちで過ごした。家電製品はゴミ捨て場から拾ってきたもの。小学校の給食で初めてケーキを食べた。学校の忘れ物ボックスから兄たちが文房具を持って帰ってくれた。クリスマスプレゼントは父ちゃんの手作りわら草履。などなどの貧乏話は平成ではなく、昭和30年代初めごろを思わせる。

中学校に入って睦美はグレ始める。母親は睦美を生んだとき43歳。周囲の若い母親から見れば、おばあちゃんに見えた。家の貧乏に引け目を感じ、教師からは嫌われ、母親に反発するようになる。親に黙って鹿児島市内の高校を受験するが、学校になじめず中退。キャバクラに勤め、暴走族に入り、レイプされ、失恋して自殺未遂を起こす。今は裕福な家庭の子が非行に走るそうだが、睦美の場合、貧乏な家庭の子はグレるという古い図式をそのまま行くような話だ。

芸能界に入ろうと思ったのは子供の頃、家族そろってテレビを見ている時が一番幸せだったからだ。テレビに出て家族を楽しませようという子供のころの夢を姉からあきらめないよう諭された。最後は働きづめに働いてきた両親を理解し、兄姉の思いやりを知るという家族愛にまとめるあたりが常識的だが納得できる終わり方である。

この本と連動した「ザ!世界仰天ニュース」は見ていないが、今日の世界仰天ニュースの上原美優さんのエピソード・・・ – Yahoo!知恵袋には「ドン引きした」「芸能界から消えて欲しい」など非難の声が集まっている。それはきっと、番組のディレクターに才能がなかったのだろう。この題材なら、笑わせて泣かせる話にできるはずなのだ。改めて言うまでもなく、料理の出来は料理人次第だ。

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「10人兄弟貧乏アイドル☆ 私、イケナイ少女だったんでしょうか?」」への4件のフィードバック

  1. saco

    ダンボール田村に続く二匹目のドジョウにはなりそうもないですね(^^;
    TVでのトーク番組では好感持ってたんですけど、この告白本はあんまし・・

  2. hiro 投稿作成者

    >45さん
    この本もしっかりしたライターが取材して書けば、もっと面白くなってたでしょう。販売のためには本人が書いたということが求められるのかもしれません。

  3. hiro 投稿作成者

    >sacoさん
    タレント本はあまり読まないので、たとえが古くて恐縮ですが、山口百恵「蒼い時」なんかよりは面白かったです。「ホームレス中学生」は読んでません。

    ま、それにしても普段読んでる本より密度が薄いのはどうしようもありませんね。

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