月別アーカイブ: 2007年2月

「ぼっけえ、きょうてえ」

体調不良で今日は1日寝ていた。で、岩井志麻子の「ぼっけえ、きょうてえ」の残りの3編を読む。小さな村でコレラが蔓延する「密告函」などは今の状況にぴったりと思いつつ読んだが、興味を惹かれたのは最後の「依って件の如し」。件は、くだんと読む。「半人半牛の姿をした怪物」のことである。

Wikipediaによれば、件は「歴史に残る大凶事の前兆として生まれ、数々の予言をし、凶事が終われば死ぬ」などの説がある。件を初めて知ったのは小学生のころ。石ノ森章太郎(当時は石森章太郎)の漫画「くだんのはは」でだった(調べてみたら、掲載誌は1970年の別冊少年マガジン)。

これは後に小松左京の原作も読んだ。ぼんやりと記憶があるのはNHKがテレビドラマにもしていたんじゃないかということ。1970年代に小松左京のSFは土曜ドラマの枠でいくつかドラマ化された。この他に覚えているのは「終わりなき負債」とか。たぶん、SFファンのディレクターがいたのだろう。

小松左京原作の件は頭が牛で体が人間の女性。もう内容はあまり覚えていないが、第2次大戦中に凶事を予言するような話だったと思う。石ノ森章太郎の漫画は長らく単行本未収録だったが、「歯車 石ノ森章太郎プレミアムコレクション」(単行本未収録と絶版作品を集めた本)に入っているそうだ。この本には「マタンゴ」も入っているそうなので、amazonに注文。これだけだと、送料がかかるので「バトルスター・ギャラクティカ サイロンの攻撃」(2004年発売の新シリーズのDVD)も一緒に頼んだ。

岩井志麻子版の件は怪物というよりも主人公の目に怪物に映る姿を表している。というか、他の3編にもはっきりとした妖怪・怪物のたぐいは出てこない。「ぼっけえ、きょうてえ」にしても合理的に説明が付く話ではないか。

岩井志麻子の小説はホラーではないと思う。描かれているのは貧しい小さな村に住む人間たちの業や心の闇、土俗的な風習であり、そこから怪異のような現象が立ち上がってくる。しかし、これはあくまで主人公の目を通して見た怪異に過ぎないように思える。“とても怖い”のは怪異現象ではなく、人間の方なのだ。

「バブル崩壊を阻止せよ」

「バブルへGO!! タイムマシンはドラム式」の原案コミック。今日届いた「気まぐれコンセプト クロニクル」に収録されている(楽天ブックスにしては届くのが早かった。9日の夜に注文して3日もかかってない)。「気まぐれコンセプト」は4コマ漫画だが、これは長くて9ページある。白クマ広告社の社員ヒライが1990年に行って、大蔵省の芹沢局長の「不動産融資の総量規制」発表をやめさせようとする。

「気まぐれコンセプト クロニクル」

「気まぐれコンセプト クロニクル」

タイムマシンは洗濯機ではなく、超高速エレベーターになっている。映画を見たとき、「バック・トゥ・ザ・フューチャー」に似ているなと思ったのだが、この漫画にもジゴワットという言葉が出てくる。この漫画はホントに原案もいいところで、1990年に行ったヒライが無名時代の飯島直子や松嶋菜々子のナンパでうろうろする場面が中心だったりする。結局、芹沢局長を2004年に連れてきてしまってバブル崩壊はないことになる(2004年発表の漫画なのである)。

バブルの恩恵を受けたのは一部の大企業が中心だったように思う。都会が地上げのブームのころ、地方では「こちらにも地上げってくるんですかねえ」という話をしていた。本当に地価が上がったのはそれから2年ほどしてから。それもシャッター通りを増やしただけで終わったように思う。

庶民としてはバブルそのものよりもバブル退治の高金利時代の方がうれしかった。今はなき、山一証券の公社債投信の利率(配当)は高くて、住宅建設資金のため貯金をせっせとしていた我が家は助かった。なんせ、毎月積み立てていくと、2年目から月に4000円近い利子が入ってきていたのだから、今では考えられない高利率だったのだ。

映画はあっちの日記に詳しい感想を書くつもりだが、アイデアが足りない。「バック・トゥ・ザ・フューチャー」を参考にするのなら、もっともっと伏線が必要と思う。馬場康夫監督としてはバブル時代を揶揄したシチュエーションコメディにするつもりだったのだろうから、時間テーマSFの要素が少ないのだろうが、それでもこの設定なら、たくさんのエピソードを詰め込んでほしくなってくるのである。はたと膝を打つシーンが欲しい。まあ、それでも一緒に行った家内と子供は面白がっていた。