ネット通販でワンクリック購入のシステムがあるのは購入手続きの途中でユーザーが冷静になるのを防ぎ、購入意欲をなくさせないためという記述になるほどと思った。購入までに確認画面が何度もあると、やっぱり買わなくてもいいかと思い、買うのをやめた経験が僕にもある。逆にワンクリックで購入して早まったかと思った事も何度もある。「ネット通販は、購入までの確認画面を1つ挟むたびに購入率が落ちていく」のだそうだ。これはデル・コンピュータがTwitterで300万ドルの売り上げを達成したということに関連して言及されている。Twitterでつぶやきを読んでいる時にコンピュータ購入のお得な情報を見ると、ユーザーは購入意欲が高まるものらしい。
本書は140文字のつぶやきのシステムが社会にどんな影響を与えているかを初期からのTwitterユーザーの立場から考察した本だ。スタートから発展、さまざまな使い方、企業・団体の利用などのTwitterに関する事象をコンパクトにまとめた好著。Twitterの全貌を知るのに役立つ本だと思う。
「いまなにしてる?」という問いに対して答えることに何の意味があるのか。Twitterを始めるまでは何の意味もないと思っていたし、今も「おはようございます」だの「おやすみなさい」だの「○○○なう」などというつぶやきはその人の知り合い以外には何の意味もないと思う。
しかし、著者の津田大介が指摘しているようにTwitterの最も強力な機能はそのリアルタイム性にある。今起きていること、自分が目撃していること、体験していることをどこからでも即座に投稿できる。これが事件・事故やイベントの実況に威力を発揮するのだ。Twitterの最も有効な機能はこれに尽きると思う。もちろん、ブログだってどこからでも投稿できるが、たった一言のブログなんてブログの意味をなさない。140文字のブログなんて読みたくないし、つぶやきを掲載するシステムとしてはブログは大げさすぎるのだ。Twitterは元々そういう簡易なものだから許される。
このほか著者が挙げているTwitterの特徴は(1)RT(リツイート)による強力な伝播力(2)オープン性(3)ゆるい空気感(4)属人性-の4つ。あとの3つは付け足しみたいなものだろう。Twitterの開発者が当初からリアルタイム性を考慮していたかどうかは分からないが、Twitterの魅力がリアルタイム性と伝播力にあることは間違いないだろう。イベントの実況は著者が本格的に始めたので「tsudaる」と言われる。あるシステムをどう使うかを見つけていくのはユーザーであり、そうしたいろいろな使い方ができる緩やかなシステムであることがTwitterの普及に役立っている側面は否定できないだろう。
Twitterの問いかけは11月20日から「いまどうしてる?」に変わった。英語版では「What’s happening?」なのだから、「いま何が起きてる?」と訳しても良かったし、その方がリアルタイム性を表しているのではないかと思う。まあ、大多数を占める個人のつぶやきで「何が起きてる?」という訳は合わないのかもしれない。